anecdote03
2007 / 09 / 20 ( Thu ) 廓
なんで来るん? 来たアカン。アカンねん。 なんで分かってくれへんの? なんで分からへんの? アホちゃう。 アカンって何回、言わなアカンの? なあ? 何回、言うたら分かってくれるん? もう来んといて。 頼むからワテのこと呼ばんといて。 こんなとこ来たアカンねん。 あんた、今度、井筒屋の番頭になるって聞いたで。 おめでとさん。 ほんま、めでたいことや。 あの井筒屋いうたら、お大名も店先を素通りせへん言うくらいの大店や。そこの番頭さん言うたら、そこらで見かける御武家さんや旦那さんより権のあるお人やん。そんな井筒屋の番頭さんが陰間なんか買うたらアカン。どんな噂が立って、あんたの出世の足を引っ張るか分からへんで?しかも、ワテは、もう薹のたった場末の陰間や・・・ 頼むから帰って? そんで、もう来んといて? 頼んます。 このとおりです。 あっやっ・・・そないに強うに掴まんといて。痛い・・・いやっ・・・いや・・・堪忍して・・・堪忍したって。 ほんまに嫌やねん。 分かるやろう? 分かっとうやろ? なあ? 頼むから・・・ なあ。 止めて。 手ぇ止めて。 ワテの体、触らんといて。 ・・・ゃ・・・ あほ。 そんな顔、見たないから言うたんや。 ワテは、あんただけのモノやないで? そんなん分かっとうやろ? 今日は昼間に客を二人、とったんや。 年増のワテにしたら久しぶりの大繁盛や。 あんたは三人目や。 菊座もゆるゆるや。 楽しめへんで? あきらめて女んとこ行き? 女、抱けるやろ? あんた、モテるやん。生まれた時か・・・・・・・・・・・・・・・・・ なあ。 帰って? なあ? なあって! ・・・勝次。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 俺は不幸ちゃうで? それどころか、たった一人の弟が奉公できる年まで母ちゃんも生きられてんもん。 不幸ちゃう。 身を売らんかったら母ちゃんもお前も俺も、あの冬は越されへんかった。母ちゃんは死んでもたけど、お前が八つになるまで何とか食いつなげたんも、この体のおかげや。そう思たら、なんも苦労なんかない。それどころか俺、幸せやねんで?あの井筒屋の番頭さんが勝次や思たら、それだけでエエねん。そんでエエねん。 なあ、分かって? もう来たらアカン。 そんで俺の体、抱いたらアカン。 俺ら兄弟や。 最初は分からへんかったけど、そやけど、お前のこと好きや思たんは母ちゃんに抱かれとった勝次に似とうと思たからや。 なんで名前、訊かへんかったんやろな? 怖かったんかな。 そうやな。 怖かったんや。 もし、お前やったら。 弟やったら・・・ なあ? ほんまに止めて。 もう、せんとこ? したらアカン。 なんで分からへんの? 親兄弟とは体を一つにせんでも何でも分かるもんやねん。そやから、こんなこと、せんでもエエねん。こんなことは他人とするもんや。 こんなことせんでも俺は勝次だけが好きやねんで?勝次しかおらへんねんで? 分かってぇな? 俺がお前を好きやって。 そやから、抱かれとうないって。 なあ? 20070914 fin selenight |
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